金曜日, 9月 29, 2006

松王丸


突然、歌舞伎を見に行きたくなって千秋楽に行った。9月の歌舞伎は、初代中村吉右衛門の生誕120年を記念して初代にちなんだ出し物だった。

急だったし、安い席でいいやと試しに一番安い2500円の席を取ってみたら、3階の一番後ろで、ちょうど幕見席(当日に1幕だけ券を買って見れるところ)のすぐ前だった。意外に舞台はよく見えたが、もちろん花道は見えない。
たぶん歌舞伎座自体が小さいから後ろでもちゃんと見えるのだ。これで十分!なんて思ったけどやっぱり座席が小さい。ひざ小僧は前の席のぶつかるし、4時間近い上演はかなりおしりが痛くなった。

いつもは2階の桟敷の上のまったりした席を取る。ここは畳の上に座椅子と座布団が置いてあるのだ。もちろん足も掘り炬燵式に下ろせる。この席はお気に入りで、東側をとったり西側を取ったりして友達と楽しむ。お値段は11,000円。もうひとつ下の段で舞台に近くなると15,000円になる。

最初の演目は「菅原伝授手習鑑」の中の「車引」。主人公は3人兄弟の松王丸、梅王丸、桜丸なのだが仕える主人が違うので争うことになる。隈取(くまどり)という顔のメイクが見事で、掛け声もすごい。衣装も美しいし、短いので外国人の方にみてもらうにはいい演目だなって思う。

だってイヤホンガイドがないとたぶん何を言ってるかわからないから、美しい舞台や役者のメイクや義太夫の音楽の調べを聞いてるだけで十分楽しい。

「菅原伝授手習鑑」
http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/exp2/w/018.html


舞台の設定も御所の中で華麗だし、隈取を美しくしたメーキャップも歌舞伎らしい。
また不思議な演出なのだが真ん中にある御所車が分解して、まるで閻魔様みたいな藤原時平が登場したり、車の一部を兄弟で引きあう踊りが息が合ってすばらしかった。

歌舞伎の演出っておもしろい。お話自体昔の話、平安時代のことだけど、歌舞伎の舞台の中ではリアルではなく、一種のファンタジーというのか、誇張された幻想的な世界だ。怒っている人は赤い顔だし、家来の人は茶色い足に黄色の足袋を履いていたりと、それぞれのキャラクターごとに衣装やメーキャップが独創的でおもしろい。

荒事という演出様式があり、力強い演技の役に使われる。この立場の登場人物ははでなメイクや振り付けがある豪快な役回りなので、この場合は梅王丸が当てはまる。
http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/exp2/w/058.html


また、三味線と義太夫が入ると夢を見ているような気がしてくる。なんというか、大きな絵本を見ているような感じだ。

歌舞伎の演目は昔の史実であったり、町人におこった喜劇や悲劇、美しい舞踊もありで江戸時代のスーパーエンターテイメントだったんだろう。

私も最近歌舞伎を見に行くようになったが、今まではなんとなく敬遠してきたところがある。

でも、席でお弁当食べててもかまわないし、こんなに安いお席があるんだからみんな気軽に行けると思う。 バレエやオペラよりもっと気軽だ。

日本の伝統芸能としてもっともっと日本の人も見るべきって思う。
なぜなら、日本の文化のエッセンスが凝縮されているから。

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