火曜日, 8月 28, 2007

ひげの隊長

昨夏も参加した国連の親善パーティに出席した。

国連協会の会長を裏千家の大宗匠、千玄室さんがなさっている縁で出席することになったが、昨年に続き講演会の後、立食パーティということだった。


昨年は、元NHKの特派員、磯村さんの講演だったが、パリ在住時代の話と日本の文化の話を中心にしたとても興味深い講演だった。

(昨年に書いたブログに詳細が載っています。→http://maki-carpediem.blogspot.com/2006/09/neo-japonism.html )


今年の講演はイラクに派遣された自衛隊のイラク復興業務支援隊長、「ひげの隊長」こと佐藤正久さんだった。



講演のテーマは「思いは通じる」


復興支援とはいえ、今なお混乱を極める戦地であるイラクへの赴任は想像を絶する苦労だったのだと思う。その部隊の隊長としての責任を思うと尚更だろう。


しかし、講演中の佐藤さんはとても明るく、言葉も大きくてとても楽しい方だった。


まずは日本との差を説明。
緯度としてはサマーワは鹿児島県と同じぐらいだという。
しかし、摂氏64度。
とにかく暑いので、車のボンネットで目玉焼きを焼いてみたそう。

石油はリッター1円。
日本での値段を考えると、石油の利権が絡む地であることがわかる。

そのような戦地での復興支援。

部隊の命を守りながらの支援である。

赴任してから驚いたことは、現地の期待とのギャップだった。
彼らの任務は給水や学校・道路等の公共施設の復興だったが、彼らの期待は違う。

電力の整備や、土地の大部分が塩害でひどい状況であり、水の浄化が必要なので灌漑の整備などを期待していた。世界第2位に国から来たんだからそれぐらいできるだろう、ということだ。

また、隊員の不安。

支援先となると住民の中に入っていかなくてはならないが、その中では敵、味方の区別がつかない恐怖。正当防衛以外は武器は使えないからだ。


涙で見送った隊員の家族に対して必ず無事に帰ってきますと言いながらも、このような状況では本当に大変だったのだと思う。例え仲間が拉致されたとしても、救出に武器は使えない。

相手が撃ってきたときに初めて使用が認められる。


このような困難な状況の中でも、なんとかやりとげることができたのは、思いは大事ということだった。

「understand」
相手を知るには、下に立つこと。アンダースタンドだそうだ。

握手は両手で必ずする。
不浄である左手は使わずに右手で食べる。
立ち居、振る舞い、目線の低さをいつも心がける。

出発前に陸軍の一番えらい人、陸上幕僚長に言われた言葉、「郷に入っては郷に従え」を実践したそうだ。

そして、日本の歴史と先輩に助けられたという。

戦争には負けたけれど見事に復興した日本、小さな国なのにロシアという大国に勝った日露戦争の事実、これらが彼らにとっては羨ましくもあり、手本にしたいのだろう。

またイランイラク戦争の前はたくさんの日本人企業戦士がイラクに赴任していた。
いまだにあの頃に世話になったことを憶えているイラクの人が多いのだという。

昔に作られた絆がいまだに受け継がれている。

そして、遠くにいいると日本はなんていい国なんだろうと思い、日本人の心を広げることが平和につながるのではないかと感じたそうだ。

佐藤隊長の部隊は皆無事帰ってくることができ、佐藤さんは参議院議員になった。


現地を実際に体験した人は強い。

こういう方が日本の政治に入られたのは大歓迎だ。

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